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実験室の風景

実験を行う上でのテクニックや我が研究室の流儀などを公開し、それが訪れた方の参考になれば幸いです

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2024/11/21 (Thu)

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精製法:結晶化

2011/06/22 (Wed)

有機化学的な手法を用いて化合物を合成すると

必ずといっていいほど余計なもの=副生成物も一緒にできて

過剰に使用した試薬や、減圧留去しにくいorできない溶媒(DMF、DMSO、水、etc...)がフラスコの中に残ります


精製への第一歩としてまず溶媒留去の優先度が高いでしょう
除きにくいものはともかく、大抵はそこまでを考えてたりして留去しやすい溶媒が選択されます


エバポレーターで溶媒を留去した後は、過剰試薬の除去です
水に過敏、水の方によく溶けるといったことがなければ分配を試みます
分配は特に、化合物が塩を生成できるときに非常に有効です

たとえば目的物だけがカルボキシル基を有する場合は
いったんアルカリ側にし塩として水中に移し、有機試薬を有機層に移せます
そのあと水層を酸性にすれば、今度は目的物を有機層に抽出できます


ここまで来て、TLCやNMRなどで目的物が分解でもしてなければ精製を進めていきましょう

有機化学で精製といったら、カラムクロマトグラフィ、結晶化、蒸留が主です

特にシリカゲルカラムクロマトグラフィの頻度は高いと思います
精製をしかける混合物がシロップだろうが粉だろうが、展開溶媒に溶ければなんでもいけますからね
弱点は仕掛ける量が増えるにつれて、シリカの量が増え、カラムの径が大きくなるということでしょうか
シリカはドラム缶で実験室にあったりしますが、ドラム缶のようなカラムは無いでしょう・・・
出来ても受けが1Lの三角フラスコなんかでやったら溶媒留去も大変で非経済的です


第二選択肢は結晶化です

結晶化をするに当たり、化合物が結晶性である、というのが前提です
あと、あまりに少量だと操作上難しいでしょう
100mg程度は必要だと思います

結晶化は溶質の溶媒への溶解度の差を利用します
私が行ったことがあるのは、温度差を利用したものと、溶質の2溶媒間の溶解度差を利用したものです

温度差を利用する方法は、ほぼ沸騰させた溶媒に溶質を飽和溶解して、温度を下げるだけというシンプルなものです
注意点は温度を上げてもモノが壊れないこと
溶媒の沸点が低くいと使いにくいということです(エーテル、ジクロロメタン等)
重要なポイントは、低温と高温で溶解度に開きがある、ということが大事です
この方法だと、スクロースは上手く結晶できますが、塩化ナトリウムは低温高温で溶解度に差があまりないのでうまくいきません

次に、2溶媒間の溶解度差を利用するものです
これは、よく溶ける溶媒Aと、溶けにくい(溶けない)溶媒Bを使います
方法は、Aに溶質を飽和して、Bを滴下していくというやり方です
上手くいくと濁りが取れないけど、ほとんどクリアなA+B溶液が調製できます
この状態で放置すると大抵結晶します


さて、両者を注意深くやってたが結晶しない場合の対処方法です
その1・・・マイクロスパーテルで液面付近の容器内壁を擦る
その2・・・冷却する
その3・・・Bをさらに足してみる
その4・・・目的物の結晶をすでに持っているのならそれを少量足してみる
その5・・・ひたすら待ち続ける

これで大抵結晶できます
それでもできない場合は溶媒を変えてみるといいでしょう
普段アミノ酸系統の化合物を使っていますが、伝統的にアミドはエーテルで結晶しやすいようで
アミドの結晶性化合物にはエーテル、というのが第一選択肢です
しかし、エーテルは沸点が低いので、2溶媒間の溶解度差を利用した方法に限ります


最後に結晶化の弱点を書いておきます
結晶化は多少なりとも溶ける溶媒を使って行いますので
どうしてもロスがでます
何度も繰り返すことで回収することができますが限度があります
したがって、グラムスケールで反応を仕掛けた場合に有用です
微量での結晶化は回収率を下げるだけと思いますのでカラムを選択しましょう

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